キリリク | ナノ
1
「さぁてと。何か面白い事はないかな。」
「え。どうしたの、そのわざとらしい言葉」
やぁ、皆様。
多忙にまみれ、刺激が薄れ、退屈の多いこの時代。
わずかでも貴女の娯楽になれるよう、ひとつの話をしよう。
ある初冬の話。
俺たちはそう、校庭にいた。
「なんでこんな寒い中・・・」
二の腕をさすりながら、俺を見つめる真澄。
その眼差しの中に反抗的な色が見えるのは、きっと俺の気のせいだと思う。
いや、そう思いたい。
「真澄・・・今の言葉で俺の繊細なプラスチックハートがバラバラ殺人事件だよ。どうしてくれるの」
「あえてガラスじゃないんだ」
儚げで悲しげに訴えてみたけど、真澄の目は冷たい。
あろうことか、肩を竦めて苦笑いときた。
「どうしてくれるの」
「え、いや。何もしてな・・・」
「どうしてくれるの」
「あ―もう!何をすればいいの!?」
ほおらね!
やっぱり真澄は受け要員。
本当、攻めには弱いんだから。
「・・・面倒になっただけなんだけど。」
「よし、じゃあ叫んでくれ!」
「何を!?」
そんな驚いた真澄に驚きだよ。
視聴者を楽しませたいのは分かるけど、そんなオーバーリアクションしなくても。
「何のために校庭に来てるのさ。」
「京が無理やり連れてきたんじゃん」
溜息と共に聞くと、まさかの回答だ。
なんて他力な。
そんな奴が大半の世に、俺は恐怖を覚えるよ。
全く昼も寝れやしない。
「京みたいな人は少数派であって欲しいと心底願うよ。というより、夜に寝ればいいよね。」
「なんて常識的な!」
額を押さえた俺に、真澄は畳み掛けるように言葉を続ける。
これはハートのバラバラ殺人事件どころじゃない。
ハートのバッラバッラ殺人事件だ。
「常識的って避難されるところじゃないよね!?」
常識イコール正しい、なんて間違いだ。
そんな壁も乗り越えられないなら、世紀の大発見なんて出来ない。
「しなくていいけど」
「なんて向上心の無い!そんな奴が大半の・・・」
「あーもう!略してよ!」
「人の話を聞かないなんて。そんな奴が・・・」
「何を叫べばいいの!?」
ふふん。
飛んで火にいるなんとやら。
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