キリリク | ナノ
2



この落ち着いて洒落た雰囲気の喫茶店に全く似合わぬ友人は、また俺をキッと睨んだ。

残念ながら、迫力皆無。
まぁ、受けっぽくて良いと思うよ。


「えっと・・・あたし、実は京くんが好きなの。かっこいいから。・・・ごめんね?」

声真似をした友人は、獣のように唸りつつ机に突っ伏す。

なんだよ、こっちのクラスに来てわざわざ俺に話しかけてくれてんだと思ってたのに、遊びにも誘ってくれたのに、ちくしょう。

友人はぶつぶつと呟き続ける。
それはそれは、ご愁傷様だねぇ。
勘違いで舞い上がり玉砕した友人にも、その花ちゃんとやらにも。
俺はその子に興味も無ければ、刺激も受けない。
誠に残念だねぇ。


心の声はしまいつつ、友人ににっこりと笑いかける。
早く目を覚まして、いい男を見つけなさいね。

「―っ!もういい、帰る!パフェ代は奢れ、バカ京!」

いきなりガタリと立ち上がった友人は、足音荒く店を出て行った。
なんともまぁ、可愛らしい行動パターンだ。

いつの間に食べきったのやら、きれいなグラスに小さく息を吐く。
何故俺があいつに奢らなきゃいけないんだい。
それに。

「あぁ、言いそびれてしまったよ。」

行き場所になじみの場所がいいと言ったのは俺。
俺からも話があることを察して欲しいものだ。


「何を言いそびれたんだい?」

優しい声と共に近づいてきたマスターが小さく笑う。
友人が居る間はずっとそ知らぬ顔をしていたのにねぇ。

「何だろうね。それより、今のお客は俺だけのようだね」

大丈夫なのか、と言外に尋ねると、マスターは艶のある笑顔で笑った。
なんとも言えぬ、大人のフェロモンだ。


「心配してくれるの?」

優しげだけれど、この人は絶対サドだよねぇ。


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