キリリク | ナノ
3
そして今、雅明と更夜は手を繋いで歩いている。
お散歩がてらの、お使いだ。
「今日はねぇ、じゃがいもとにんじんとお肉と玉ねぎと・・・」
「あと、お米と小麦粉だね。」
「そう、それ!」
肉じゃがなのか、カレーなのか。
そして、米と小麦粉は弟をこき使おうという姉の企みなのか。
とにかく、更夜と一緒に買い物と言うだけで雅明は幸せだった。
それは更夜も同じようで、始終にこにこと話したり、鼻歌を歌ったりしている。
しかも、雅明はかなり裕福な生活をしている。
住宅街を歩き、しかもスーパーに買い物、と言うことは非常に貴重な経験だった。
「学校はどうだい?」
温かく小さい手に和みつつ、尋ねる。
「たのし―よ!」
見上げてきた更夜は、にっこりとまた笑った。
「あのね、あさがお育ててるの。僕の、もうすぐ咲きそうだよ!青いつぼみ!」
そうかそうか、と微笑みながら歩く。
しかし、次の一言でその笑顔は凍った。
「だけどね、ようくんがイジワルなんだ!『おれのより先に咲いたらダメ』って、僕のあさがおにテープをつけようとする!」
何だと・・・?
見たこともない、『ようくん』に殺意と嫉妬がわく。
可愛い更夜に意地悪・・・
しかも、何だその俺様的思考は。
行って懲らしめてやろうかと、本気で考えた馬鹿な大人だった。
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