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年甲斐も無く、胸の高鳴りを抑えられない。
ソファに腰掛けつつ、その扉が開くのを今か今かと待ち構えていた。
「ただいま―!」
「ただいま。」
元気な可愛らしい子供の声と、その父親の声が響く。
そのまま勢い良く開かれた扉の向こうに、こげ茶色の髪をした子供の姿が見えた。
「まさあきさんだ―!」
一瞬のうちに、花が咲き誇るかのような笑顔になる。
いや、花なんかよりもずっと綺麗で可愛い。
雅明は、頬を緩ませつつ両手を広げた。
「おかえり、更夜。」
そのたくましい腕の中に、更夜は何のためらいも無く飛び込む。
こういう時、雅明はつくづく思うのだ。
あぁ、仕事をサボってでも頻繁に会いに来てて良かった。
この可愛い甥っ子に人見知りでもされたら、それはそれは悲しい。
生来、人懐こい子ではあるが、それでも自分への懐き具合は群を抜いている。
姉とは仲の良い兄弟であったこともあって、雅明はかなりの頻度で更夜の元を訪れていた。
「おかえりなさい。」
キッチンから出てきた若い姉が、義兄に笑顔で声をかける。
結婚後7年経つも、未だに新婚のような恋人のような人たちだ。
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