見えない鎖と
「なぁ、愛してるって言えよ。」
何を言い出すのかと思った。
情事後の気だるい体と、妙に淀んだ空気。
太陽はいつも、俺を抱いた後に同じ行動をとる。
共に風呂で汚れを落とす。
俺の髪を乾かして、自分の髪は俺に乾かさせる。
それから一緒のベットに横になる。
大抵、俺を後ろから抱き込む格好だ。
そして、そのまま朝を迎える。
何故かは知らないが、どんな時でもこれを望んだ。
刃向かう理由も無いので、俺はされるがままになっている。
今日もいつものように抱え込まれたところで、耳元に囁かれた。
“愛してるって言えよ”
何を、言い出すのだろうか。
「・・・どうか、したのか。」
怪訝に問い返せば、後ろで笑った太陽の吐息が首筋にかかった。
「おまえは俺の月だろうが。俺を愛してることなんざ、当然だろ。」
根拠もない、筋の分からない主張。
幾度と無く言われた、命令のような愛。
だがそれは、俺の心に波紋を残す。
依存しながらも、俺は太陽を信じきれていない。
いや、依存しているからこそかもしれない。
だから太陽の言葉をそのまま飲み込めない。
愛、とは何か。
それすらも、俺には分からないのだ。
[*前] | [次#]
back