伸ばした先は
愛されてはいた。
十分すぎるほどに感じていた。
同時に、全く分からなかった。
その愛は俺にだけなのか、何を返せばいいのか、太陽は俺に何を欲しているのか。
そして愚かな俺は、戸惑いつつも期待したのだ。
彼を愛そうとし始めてしまったのだ。
愛だなんて分からない不確かなものであるのに。
彼だなんて自分とは遠いだけだというのに。
なんて、愚かな。
「月、月…」
悲しくはない、だって当前のことだ。
彼は様々なものに愛されている。
その彼が愛し返すのに、何の不自然があろうか。
「…地球」
悲しくは、ない。
ただ、なんだろう。
虚しくて、痛い。
息をするたびにせり上がる。
じわじわと皮膚から染み込んでくる。
思わず、震える手を伸ばした。
しっかりと抱き留めてくれた地球。
体温に安堵すると共に、不思議に思った。
何故か、地球はわらっていた。
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