千変万化 | ナノ
違和感



違う
これじゃない


「あっ、ふ…ぁあっん…」

組み伏せた白く細い身体。
絶えずに漏れる嬌声。

「た、いよ…っあ!」

俺の名を愛しそうに、玉を転がすような声で呼ぶ。
首に回された手も華奢なつくりをしている。

「っね、キス、して…っ」

小首を可愛らしく傾げる。
きめ細やかな皮膚に手を滑らせつつ、その小顔に唇を寄せる。


瞬間、目が合った。

白みの強い、ぱっちりと大きな水色の瞳。

くるりとカールした長い睫毛に囲まれたそれに、急に嫌気がさした。

違う
これじゃない



振り払うように、律動を激しく再開する。

「いぁっ、んっ、あぁっ、はげしっ、ん…!」

違う…!
こんなじゃない

艶っぽく喘ぐ声にも、神経を逆なでされた。


「…っ、黙ってろ」

「…っぐ!」


片方の手で喉を潰す。
相手は苦痛に涙を流しながら、手をどけようと足掻いてきた。


違うんだ。
こんなのじゃねぇよ。





月が欲しい。


綺麗に澄んだ声。
さわり心地の良い長い髪。
髪と揃いの、銀の瞳。

美しく煌めく至宝のような、諦観と退廃的な何かを漂わせるような。
虚無な強さをもつ瞳。
あいつをそのまま表すかのような、愛しい瞳。


月しか欲しくない。





いつの間にか抵抗は止んでいた。
気絶したらしい。

ぐったりと横たわる水星の肢体を見ながら想った。





俺の月は、
今なにをしているんだろうな。

俺が閉じ込めた俺の部屋で。

可哀想に、俺様が居ないんじゃあいつも寂しいだろう。


「今すぐ帰るからな」

俺を迎える銀を思って、にやりと口角が上がった。






君以外は、全部不正解の出来損ない。




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