千変万化 | ナノ
例えば
例えば、の話だ。
あくまでも、例えばという仮定だ。
例えば、俺が太陽と出会わなければ。
俺は、“幸せ”だっただろうか。
幸せが何かは分からない。
一人一人が異なる基準や定義を持つものだ。
そして俺は、自分の基準を把握していない。
周りの水星たちに疎まれること、無理に抱かれること、束縛されること。
焦がれるように愛されること。
どれもが無い俺の日常は、穏やかなものだろう。
それは、幸せだろうか。
確かなのは、かなり違う日常を送っているだろうことだ。
太陽という存在がなければ、今の俺は成り立たない。
恐らく今と反転した世界に違いない。
輝くことは出来ず、熱されることも無い。
だがそれが不幸とは限らない。
それ以前に、太陽と出会わないなら、俺は太陽系にはいないのだ。
ならば、地球たちとも出会えない。
あぁ、ますます違う日々だろうな。
考えてもどうしようもない。
ただ時間を消費する、意味も無い問いかけ。
それをするのは決まって、閉じ込められたおまえのいないおまえの部屋。
もちろん、例えばの話だ。
もう遅い。
俺はもう、おまえと出会ってしまった。
(幸か不幸かだなんて、どうでもいい。)
ただ
今を刹那に積み重ねていく。
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