極彩色ヒーローズ | ナノ
2



ゆったりと穏やかな声に振り向いた。


マイナスイオンを多量放出する緑は、ふかふかのソファでお茶の時間だ。

緑色の髪だが、目に痛い色ではない。
“抹茶を薄めた感じ”だと、どっかの赤は言っていた。
確かに言われると頷けはするが。

ヒーローズの母的存在、というか何というか。
とりあえず優しくおっとりとしている奴だ。

その隣でさらに優雅にカップを傾ける白といい、2人はやけに上品に穏やかな時を過ごしている。


「紅茶を一杯くれ。」

神経を落ち着かせるために、眉間を押さえながら頼む。
カップから口を離したこの家の主は、ふわりと笑うとポットに手を伸ばした。

白い肌、プラチナブロンドの髪と揃いの瞳。
人形のように整い、現実離れした容貌。
長い指先はとても器用に繊細に動く。
このルックスで金持ち、頭良し、運動神経良し、性格良し、とくれば、当然校内のスター的存在だ。

いや、スターじゃなく王子だった。
実際に、ホワイト王子だとか呼ばれいた。


「レッドはケーキもいるよね?」

横文字の発音がやたら流暢なのは、ハーフであり帰国子女でもあるためだ。

「いる!!ホワイトもケーキも大好きだ!」

何故、そこで挙手する必要があるんだ。
何故、ここで俺に抱きつくんだ。

せっかく緑と白を見て落ち着こうと思ったのに、後ろから飛びついてきた赤に台無しだ。


「じゃぁ、これにて今日は解散っ!」

解散、とは帰ることではない。
ヒーロー状態から通常に戻る意味だ、と赤が熱弁していた。
正直、どうでもいい。


「翔(カケル)!今日は何のケーキ?」
「チーズケーキだよ。」

俺の隣に上機嫌に座った勇斗が身を乗り出す。
翔は答えつつ立ち上がった。
世辞抜きで優美で洗練された動作だ。
俺にもたれかかってくるバカとは大違いだな。

「な―、タカ。タカってば。青田さ―ん!」

確かに本名は青田貴文(アオタ タカフミ)だが、なれない呼び方にぞわっときた。

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