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すっかり忘れてた。
そういえば、ここへ来た理由はそれで、だからこそ俺は警戒してたんだ。
おいしいココアにいつの間にか懐柔されられかけてた。
しっかりしろ、更夜。
「別に何も」
目の前の机にマグカップを置いて、会長の漆黒の瞳を見据える。
何故か会長は一瞬驚いて、それから目を細めた。
切なく苦しげで、だけども甘く懐かしみ愛おしむ瞳だった。
これは、恋い焦がれている瞳だ。
俺を通して、誰を見ているのか。
どうでもいいけど、なんかムカつくな。
「どうせ御琴が文句でも言ってきたんだろうが。」
分かってるなら聞くな。
笑いながら言うな。
本当にムカつく。
「あいつには言っておくから。…悪かったな。」
寂しそうに言うな。
申し訳なそうに謝るな。
…って、えぇ!?
「なんで謝っちゃってんの!?ってか、えぇ?本当に会長?は?」
唯我独尊な俺様じゃなかったっけ!?
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