∞主義 | ナノ

6


「勉よりも明の方が雰囲気が柔らかい。それに言葉も行動も少し慎重、かな。」

顔を見合わせた双子は、首を傾げる。
これまた同じ角度にそろっていらっしゃる。
素晴らしいよね、ギネスにのれるよ。

分からないから、と苦笑いした透は優しく俺の頭をなでた。

「更夜は本当に不思議な子だね。」

よくわからないけど、多分ほめ言葉だろう。
とにかく、なでる手が温かくて気持ちよかった俺はにっこりと笑っておいた。

「ふふっ、可愛い…」

やたら妖艶な笑顔の後で、透は立ち上がる。


「僕はそろそろ戻らないと。またね、更夜。」

次はふわりと綺麗に笑って、透は手を振った。
笑い方が何通りあるんだろうな。
ふと、そう思った。


「俺たちも行くね〜」
「じゃあね〜」

多々良ズにも手を振りつつ見送ると、急に片方の背中が立ち止まった。
そのまま、真っすぐこっちに戻ってくる。

忘れ物か、と尋ねた俺に、明はにこりと笑った。
そして、小声で素早く告げるとすぐに帰って行った。

その時の、はにかむような笑顔に男ながらキュンと来たのは秘密にしておこう。

汚れがなく綺麗で、本当の明るさのある笑顔だった。
文句なしにかっこいいが、どこか可愛い。


やばいぞ、これは。
不意打ちだ、バカ双子め。




『ありがとう』

たった一言。
それだけなのに、とても嬉しくなるなんて。



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