君に会うためなら
「うるさい・・・」
バスケの白熱した試合と、歓声をあげ続けるギャラリー。
歩く僕を眺める視線と、黄色い悲鳴や野太い声。
全てが神経を逆撫でする。
それでも表情に嫌悪を表したりはしない。
面倒だからね。
本当ならこんなところには絶対来ない。
自分のサッカーの試合が終わったばっかりで疲れてるし、イライラするだけ。
だけどね。
「あ―、あれかな。」
誰にも聞こえないように小さく呟く。
4コートあるうちの、最も騒がしいところ。
上のギャラリーも満杯で、食い入るように見つめている。
“2C vs 3H”の試合
周りのあんな奴等の目に晒されていると思うと、嫌でたまらない。
だけど、会いに行くよ、今すぐに。
更夜
そう名を呟くだけで、心がふっと楽になった。
彼は、彼だけは明らかに特別だ。
- 73 -
[*前] | [次#]
back