∞主義 | ナノ

3


「今回は負傷者はいませんが、罰は受けてもらいます。」

不敵に笑う会長の横の男が、口を開く。

黒髪に、黒くて細いフレームの眼鏡。

制服の着崩しまくりの会長とは違って、きっちりネクタイも締めてる。

いかにも真面目で、すごく優秀そうな奴。

話し方も、綺麗な標準語でていねい語。

背も高めで、かっこいい顔してるけど。

こういう奴ちょっと苦手だ。


「うるせぇな。俺に構うな。」

赤髪、もとい橘が不機嫌オーラを出す。


「そういうわけにもいかないよ。」

静かに口を挟んだのは、透だった。


「だって、更夜が痛い思いしたんでしょ。」

「は?俺?」

傍観者になってた俺は、突然出された自分の名前にきょとんとしてしまった。


「喧嘩だし、痛いのは当然でしょ。」

あほ面になっちゃってたんだろうなー。

少し自分に後悔しながら、ひらひらと手を振る。


喧嘩、俺は好きだしね。


「本当に怪我とかしてないの?」

心配顔の透に、とびきりの笑顔で「大丈夫」と言った。

透はそれでも不服そうな顔で橘を見た。


・・・俺の笑顔、効果無し?

ちょっと悲しいじゃねぇか、コノヤロウ。



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