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黒髪も、とても似合う。
艶やかな色っぽさがあった。
「・・・ふぅ。」
椅子に座りなおすと、口から溜めていた息がもれる。
可愛い可愛い、愛おしい甥っ子。
姉との仲が良いこともあって、昔からよく見ていた。
どんどん大きく、美しくなっている。
それに比例するように、彼を求める自分の気持ちも強くなっている。
前よりも傍にいれる事は、無条件に喜ばしいことだ。
だが、あの子の美しさは心配の種だった。
ここで憂いても仕方がないな、と自分を笑う。
問題が起これば、その時だ。
あの子も「大丈夫」だと笑っていた。
ようこそ、更夜。
君がここで笑って生きてくれれば、何の文句もない。
「愛しているよ」
最後に抱きしめた時、そう小さく呟いた。
あまりにも小さすぎる声で、ささやいた。
きっと聞こえてはいないだろう。
だが、それでいい。
自分が更夜を想う気持ちは本当だと、しっかりと自覚している。
いつか、聞こえるように呟いたとして、届くかは分からないが。
今は、これでいい。
満足するように一つ頷いて、書類に手を伸ばす。
外の世界には、五月晴れの空が広がっていた。
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