∞主義 | ナノ
助走も全力で
それから俺たち3人は一緒に食事した。
敵対心ってか、警戒心バリバリだった透も、なんだかだんだん慣れたみたいだった。
久賀先輩ことヤスは、3年Hクラスの先輩で、本名は久賀康弘(ヤスヒロ)。
タメ語でいいって言ってくれたし、実のところ敬語って苦手だから、なんだか気が楽だ。
うん、やっぱ嬉しいな。
別にさ、人類みんな兄弟とか、性善説とか、出会った人みんなと友達になれるなんてメデタイこと、信じてねぇよ。
みんなそれぞれ色々あって、単純じゃねぇんだからさ。
だけど、そうだったらいいなって、願ってはいる。
人生、前向きに楽しく生きたもん勝ちだろ。
「あ、そういえば、そろそろ文化祭の準備期間に入るね」
「っまじ!?ここの文化祭ってどんな?」
透が何気なく言った言葉に、俺は飛びついた。
だってさ、文化祭ってめちゃくちゃ楽しいじゃん!
1年の時の学校でも、中学とは比べ物にならないくらいすっごい楽しかった。
いつもはへらへらしたクラスが、一生懸命に合唱練習したり。必死に予算とか考えてクラスで模擬店したり。バンドやってる奴がそれを演奏したり。他校から来た友達に絡んだり。
お祭り気分でわいわいやれて、全力投球できて、本当に楽しいよな。
ああいうとき、若いっていいよなって本気で思う。
「ん―、クラスでの出し物と模擬店やな」
「あとはあの忌々しいランキングの中間発表とか、個人の出し物とかね」
透の今にも舌打ちしそうな言葉に首を傾げると、ヤスが苦く笑った。
「ランキングは抱きたい・抱かれたいのやつで、個人発表は自慢大会みたいなやっちゃな」
・・・うわ―。
だけど、まあ、自慢するくらいだしすごいんだろな。
うん、クラス対抗合唱は好きだから無くて悲しいけど、なんか楽しそうだな。
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