∞主義 | ナノ
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きょとんとした久賀先輩は、再びつかみどころ無くへらりと笑う。
「オトモダチには、なってくれへんの?」
横の透が顔をしかめているのは、目に入らなかったことにしとく。
久賀先輩の、どこか揶揄するような口調と相変わらず気味悪い笑顔も、気づかなかったことにしとく。
にっと笑って、申し訳ないですけど、と切り出した。
「俺は、心から友達になってくれる人しかいらないんで」
予想外の言葉と拒絶だったのか、2人は目を見張る。
だけどさ、わがままかもしれねぇけど、そう思うんだ。
卒業したり、離れたり、大人になっても、ずっと一緒にいられるような。
信頼しあえて、助け合えて、さらけ出せる、共にいて居心地が良いような。
理想高いし、ガキっぽいかもしれねぇけど、少なくとも俺は本気でそう思ってる。
「せやったら、俺が心から友達になるんやったら握手してくれるん?」
「少しでもそう思ってくれるなら喜んで」
にっこりと笑えば、まだ動きがぎこちない2人が身じろぎをする。
そこでいきなり訪れた沈黙に、いい加減飯食いてぇなあ、と思いを馳せる。
なに食おうか、うん、やっぱ肉だな。俺は断然、魚より野菜より肉派だしさ。
肉と甘いものさえあれば、他の食材いらねぇかも。
精神的にはそれで十分。
あ、デザートはチョコ系がいいな。
「・・・せやな、」
ぽつりと響いた言葉に、思考を切り替える。
思わず下がっていた目を向ければ、久賀先輩はにっこりと笑ってくれた。
「あんたやったら、それもええかもしれへんわ。・・・努力する」
その言葉と、ようやく本当に笑ってくれたことが、たまらなく嬉しい。
「よろしく!」
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