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横の透から、無言の圧力がかかってくる。
さっき言ってた通り、しゃべるな、握手もするなってことだろうな。
どんな奴だろうと、俺は他人の評価だけで判断したくない。
見かけだなんて、そいつを構成するごく一部だ。
噂だなんて当てにならない。
だけどさ、俺は馬鹿じゃねぇよ。
空気も読めるし、俺の第六感ってのはかなり優秀だ。
こいつは危険だ、得体が知れない、関わらないほうがいい。
脳がうるさく警鐘を鳴らす。
俺は人類みんな友達だとか、どんな悪にも理由があるなんて考えるほど、馬鹿でもお人好しでもない。
だから、この手は取りたくない。
たくさんのアクセに飾られた手を見つめていた俺は、目を閉じて一回深呼吸をする。
そして動くことも話すこともせずに、ただ相手を真っ直ぐに見据えた。
「握手くらいしてええやん。え、俺が嫌いなん?」
へらへらと笑ったままで、対する久賀はひらひら手を降る。
だけど変わらず、その目は冷たく俺を射抜く。
言葉にある悲哀も憤りも、何の感情もなく、ただ冷淡に観察している。
嫌い、なのかな。
俺はこいつが、怖い、のかな。
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