∞主義 | ナノ

奇怪に、既視感

何なんだ、コイツ。

緩そうにへらへら笑ってるのに、油断も隙もない。
凍り付いてるみたいな瞳は、こっちの中まで見通そうとしてるように感じる。

こいつ、めちゃくちゃ強い。
今までの喧嘩やら何やらで勝手に育った俺の本能が、そう警鐘を鳴らした。

透に言われなくても、俺は黙ってる。
下手に動くと、こっちが危ない。


「久しぶりだね、久賀」

「せやなぁ。久しぶりに学校来たわぁ」

ゆったりと止まった、その久賀と呼ばれた男は、警戒している透の言葉に、にっこりと笑った。


ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。

だって、思わず姿勢を伸ばしてしまうくらいに。

上手く言葉に出来ないけど、すごく不気味で威圧的で冷酷だった。

それなのに、何故だか感じたのは既視感。
こんなインパクト強い奴なら、忘れるわけねぇのに。


少したじろいだ俺に気づいたのか、久賀がこっちを向く。
全く動かない瞳のまま、また顔に満面の笑みを浮かべた。


整った人形の顔、偽りなんてもんじゃない笑顔、鋭すぎる瞳。

恐怖はないけれど、表面上の表情は能面に見えて吐き気がした。


「はじめましてやな、如月更夜クン」


前に伸ばされた手を前に、俺はごくりとつばを飲んだ。

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