∞主義 | ナノ
4
うんざりしながらも、仕方なく意識を無理やりにでも食に持っていこうとした。
腹減り度がもうマックスだからな。
するとその瞬間、騒音の中でも一際大きく響いた破壊音と、ぴたりと止んだ大合唱。
「え?」
一体何が起きたんだと、驚きに思わず隣を見る。
透は、ただ静かに眉を寄せただけだった。
「・・・透?」
下の異常もかなり気になるけど、なんだか透の様子もおかしい。
顔を覗きこむと、透は何も言わずに俺の腕を掴んだ。
「更夜、今から変な人が来ると思うけど・・・絶対に一言も話さないでね」
それは忠告とかお願いじゃなくて、きっぱりとした禁止令だった。
その勢いに押されて、思わず縦に頷く。
「やっほぉ、副会長サンと噂の編入生クン」
いきなり響いた声に振り返ると、1人の男がこちらへと歩きつつヒラヒラと手を振っていた。
確かに不思議というか、変というか、とにかくかなり奇抜な奴だった。
プラチナブロンドの髪に、黄緑やらピンクのメッシュが入っている。
ピアスも歩くたびにジャラジャラと鳴っていて、俗に言うとチャラ男。
イントネーションも、きっと関西の人のものだ。
だけど、一番の不自然さはそこじゃない。
にへら、と笑ってるのに、笑ってない。
笑顔を作ってるけど、その目に表情は無い。
整った顔は、なんだか気味の悪い人形のようにも思えた。
- 102 -
[*前] | [次#]
back