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気分、悪い。
気持ち悪い。
久しぶりにあんなに走ったからか、それとも今の現状に対してか。
眩しすぎて眩暈がする。
真っ直ぐすぎて頭が痛む。
憐憫のような温い感情に、自己満足の塊のエゴに、ひどく吐き気がする。
世界がまわっているような感覚に、思わずこめかみを押さえた。
そうでもしないと、平衡感覚を失って倒れてしまいそうだった。
ぱしっと、突然その腕を掴まれる。
一体、誰の手だろうか。
世界を認識することが億劫で、のろのろを顔を上げる。
「大丈夫か。」
意外にも、心配そうに問いかけてくれたのは会長だった。
「・・・お気に、なさらず。」
自分の失態とわずかな気の緩み、心が揺らいだことを後悔しつつ、静かにそう答える。
落ち着け、千島京。
陽の糾弾の矛先は、今なお蒼白な双子に向けてだ。
俺にじゃないんだ。
いや、それだって大きな問題であるのだけれども。
ごくりと唾を飲み込めば、幾分か気が楽になる。
会長の手から逃れるように腕を引きつつ、俺を見ていた視線全てに向けて微笑んだ。
「少し、走りすぎたみたいだ。」
安心されるようににこりと縦に顔を揺らせば、心配顔の陽の表情が緩む。
双子も時を取り戻したかのように身じろぎ、副会長もゆっくりとまばたきをした。
「ふぅん、じゃ。」
ただ1人、雰囲気を何も変えず、まだ俺の腕から手を離さない会長が口を開く。
彼はにやりと口元を歪めて、はっきりと言い放った。
「救護のとこまで俺が連れてってやるよ。」
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