嗚呼、素晴らしき | ナノ
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スピードを程よくあげて、機械の示すポイントまで一気に駆ける。
ただ、馬鹿ではないから、人が多そうな場所は避けてはいるよ。

陽は変わらず、元気に走り回っているようだ。
おかげでなかなか追いつけない。

俺を見つけた人たちが追いかけようともしてくるが、それらはさらりと受け流していく。
俺の逃げ足への自信は、決して過信じゃないってことさ。


さぁてと。


今、ここにも聞こえてくるのは、陽の元気な声。
そんな大声を出して、君は鬼ごっこの何たるかが分かっているのか、と言いたい。

「―っんだよ!しつこいっての!」

しかもどうやら人と一緒なようで。
めんどくさい人じゃなければいいけれど。

校舎の角をまがると、見えたのは陽、そして見間違えるはずもない2人。


「・・・うわぁ、まさかの会長と副会長。」

めんどくさい、めんどくさすぎる。
小さく口の中で呟くが、まぁいい。
吾妻双子は相変わらず追いかけてくるし、気にしてもいられない。


「陽っ!」

呼びかければ驚きに目を見張る陽の元へ、そのまま逃げ込む。
あまり人とくっつくのは好きじゃないが、ちょっとした演出だ。
相手は陽だし、逃げ込みがてら抱きつくくらい多めに見て欲しい。

陽は正面からしっかりと抱きとめてくれた。
さすがに息がきれている俺の背をさすりつつ、慌てているのか赤い頬で尋ねてくる。

「き、京!どうしたんだ!」

言葉にするのが億劫で、黙って俺が来た方向を指さす。
そこには、同じように少し息をきらせた吾妻双子がいた。


「あいつら、どうにかして。」

陽にだけ聞こえる音量で耳元でささやくと、そのまま陽の後ろへ回る。
だって、ここまで頑張って走ったんだし、もう休んだっていいよねぇ。


「っ!おい、てめぇら!」

陽がもっと顔を赤くしたのは、怒りか焦りか、なんなのかは分からない。
とにかく、陽とそれから2人の視線の先が吾妻双子に向いたことに、俺は満足した。




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