嗚呼、素晴らしき | ナノ
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「お気になさらず。」

俺のことなんてどうでもいいから、俺のためにも王道編入生に構ってほしい。
俺の萌えのための、切実な願いだ。

「ふぅん、だって。」
「じゃあ、自己紹介ね。」

仲良くアイコンタクトをした2人は、同じタイミングでこちらを向く。

・・・あ、いいね!
別に王道編入生と絡まなくっても、双子でのカップリングでも全く問題ない!
出来れば弟×兄希望だ。
互いに依存しすぎて、ヤンデレ気味がいいな。
うん、素晴らしい、萌え!

素早く回り続ける俺の脳内を前に、2人は仲良く自己紹介を始めた。

「2S、吾妻翔(アヅマ カケル)で―す。」
「同じく2S、吾妻渉(ワタル)で―す。」

金髪が翔、銀髪が渉。
ちょっと分かりにくいし、覚えにくいねぇ。

「1S、千島京です。」

同じように挨拶を返せば、重なった声が「知ってる―」と返事してきた。
首を傾げる俺へと同じように笑いつつ、同じ仕草で手が伸ばされる。

「よろしくね―。」

どうやら、握手を求められているみたいだねぇ。
2本もある腕に、どうやって握手すればいいのか。

それに。

「残念ながら、さすがに自ら鬼に捕まることはしませんよ。」

2Sは会長や副会長のクラス、そして今この会場にいるのなら、すなわち彼らは鬼だ。


「あららぁ、残念。」
「じゃあ、実力行使だね。」

双子はケラケラと笑う。
あくまで軽いその口調とは裏腹に、その瞳には掴みどころのない狂喜が潜んでいた。

前の2人が地を蹴ると同時に、俺も駆け出す。

こんなはずじゃなかった、計画が大きく狂ってしまったよ。
盗聴に集中しすぎてぼうっとしちゃってたからね。俺のうっかりさん。

だけど、悪くない。

鬼ごっこを楽しむなんて、小学生以来だ。
相手は手強そうな双子でもあるし、これは思う存分楽しんで逃げ切ろうじゃないか。


後ろを確認すれば、さほど差は開いていない。
やはり見た目どおり、吾妻双子は運動は得意みたいだ。

俺は少しスピードをあげつつ、懐から先ほどまで愛用していた盗聴器を取り出す。

この子は高機能だからね、盗聴ターゲットへの追跡機能もついているんだ。
ゆるやかに笑み、後ろへ向かって軽く手を振る。


鬼さん、こちら。

どうせなら、王道編入生のところまで素敵な2人をご案内するとしよう。




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