嗚呼、素晴らしき | ナノ
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「到着っと、」

ふぅ、と息を吐く。
いくら逃げ足には自信があるとはいえ、流石に少し疲れたな。

人気が無く静かで、小鳥のさえずりまで聞こえる第一の隠れ場所。
林の中の、かなり入り組んだ場所にある。

だからといって油断は出来ないから、20分後には第二の隠れ場所へ行くつもりだけれどね。


「さぁてと。」

にっこりと笑うと、ポケットから黒い機械を取り出した。
電源を入れると、海の波音のようなノイズはあるものの、向こうの音はしっかりと届いた。

何してるって、それはもう愚問だよね。

盗聴に決まってるじゃない。


陽の襟元を正すフリをしながら取り付けた、高性能の盗聴器だよ。
ちゃんと機能しているようで良かった良かった。


後を付けて、こっそり覗くのも良かったのだけれどねぇ。
ほら、やっぱり陽は動きが激しそうだし、疲れるだろうなって思って。

萌えは素晴らしいけど、なんで俺が疲れなきゃいけないの。
犯罪だろうが何だろうが、別に表立って迷惑かけてはいないんだから許容範囲でしょ。

可愛らしいいたずらであると、大目に見て欲しいな。


自分の耳元にとりつけたそれから聞こえるのは、荒い息遣いと振動と風音と、人の声。

どうやら陽は、未だ疾走しているようだねぇ。
元気でお若いことで、うらやましい限りだよ。


そろそろ10分経つから、大量の鬼が駆け巡りだすだろう。
あぁ、早く早く。
早く、楽しい展開になっておくれ。

鬼ごっこにまぎれて制裁しようとか、それを会長が阻止だとか、まぎれてキスだとか、何でも良い。

とにかく、俺に萌えをおくれ。



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