∴3
かくかくしかじか、そして俺は今、スタート地点にいる。
いよいよ始まるわけだ、鬼ごっこが。
開始まであと5分、各々はやや緊張した面もちだ。
逃げる側同士だからか、周りの人が応援の言葉をくれる。
そんな少し静かな中、いきなり陽の大きく弾んだ声が響いた。
「暁良!拓巳!」
周りの驚愕や嫌悪の視線など気にも止めず、陽は手を振りながら2人に駆け寄った。
まるで幼い子供のように無邪気に、親しげにはしゃいで話しかける。
にこやかに応対する副会長、不敵に笑う会長。
周りの非難の声も含めて、素晴らしい萌え光景だと思う。
よく2人を見つけ出したな、と陽を誉めてやりたい。
「…大河、行かなくていいの?」
俺の隣を見上げられば、静かに首を横に振られた。
あれれ、おかしいな。
ここは愛しの編入生を生徒会に奪われぬよう、守りに行く場面だろうに。
腑に落ちず、理由を尋ねる。
ちらりと俺を見やった大河は、また違う方向を見ながら呟いた。
「行く必要ねぇし、…京、がいるし。」
あれれ。
「千島じゃなくて京なんだ。」
少し意地悪く問えば、うっせぇと睨んできた。
まぁ、いいか。
嫌な気はしない。
「おい、」
[prev] | [next]
back