∴用意、ドン
ついに始まった、クラスマッチ。
さて、真澄は今頃、頑張っているだろうか。
鬼ごっこといえど、かなりハードな2時間の真剣勝負。
相手方の鬼はこちらの倍の数、そしてトランシーバーまで使っての連携プレーまでしかけてくる。
こちらはただひたすら、この学園の広大さを武器に、逃げ隠れる。
誰だろうね、これ考え付いたの。
本当にけっこうな鬼畜だと、つくづく思うよ。
「うっわ、すっげぇな―・・・。」
隣の陽がぼそりと呟いた。
俺たち後半組は、現在ホールで待機中だ。
待機と言っても、堅苦しいものではなく、他の競技の応援に行ったりもできる。
この日のために学園の至るところに設置されたカメラの映像を流すスクリーン。
その横にある電光掲示板には、ただいまの捕獲人数と残り時間が示されている。
この学園の鬼ごっこって、ハリウッド映画にでもなりそうだよねぇ。
ちょっと豪華というか、本格的すぎるよ。
残り時間は1時間、捕獲された人数は半分くらいだ。
ちなみに、これは捕獲された人数が9割いけば鬼の勝ち、そうでなければ逃げる者の勝ちだ。
トランシーバーやら堅固な檻もあるし、この戦力差からすれば妥当な線引きだろう。
妙な感慨と共に、駆け回る生徒を見ていたが、ふと思いつき立ち上がる。
ほぼ同時にこちらを見てきた2人に、曖昧に微笑む。
「じゃあ、ごゆっくり。」
ひらりと手を振って、俺は素早くホールを後にした。
急いだ理由は、陽たちと離れたかったからだ。
別に少し疲れたっていう俺の事情もあるが、これから俺が向かう先の人物の事情でもある。
どうやら彼は、素晴らしき王道編入生の陽を苦手とするらしいからね。
まぁ、気持ちは分からなくはない。
同じクラスメートとして、諦めるべきだとも思うがねぇ。
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