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「静かに。」
凛と涼やかに響いた声は、我らがクラスの生徒会役員さまのものだ。
一之瀬唯、クール眼鏡の書記さん。
少し歓声があがったものの、体育館はすぐに大人しくなる。
それから、淡々と競技場の注意などが進められていく。
そして、ここで何故か生徒会長の話。
イベントは全て生徒会と委員中心であるとは聞いていたけれど、本当に教員は一切関わることはないみたいだねぇ。
会長がステージ上に上ると、素晴らしく王道な歓声や悲鳴があがる。
涙ぐむ生徒、頬を赤らめる生徒、必死に声をあげる生徒、・・・。
耐え切れず、くつりと笑みを漏らせば、唯一気づいた真澄が怪訝そうにこちらを見つめた。
「存分に楽しめ。ただし、大事は起こすなよ。」
騒がしすぎる会場をあっさりと無視し、会長が言い放ったのはこれだけ。
会場は大きく揺れ、歓声のボリュームが上ると共に、拳を振り上げる輩も大勢いた。
やはり、王者に相応しい人なのだろう。
俺様で強引であるが、そこにはカリスマ性と威厳がある。
支配されることが苦痛とならないような、むしろ恍惚とさせるような。
容姿も声もすべてが洗練され、それでも生き生きと力を感じさせる。
まさに、生まれ持っての才能と教育が生み出した逸材だ。
やっぱり会長は素晴らしい攻め要員だねぇ。
横を見やれば、陽はただ、周りの騒音に耳をふさいでいただけだった。
つれない王道編入生の模範だねぇ。
今のところ順調なすべてに満足して、俺はくすりと笑みをもらした。
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