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おまえは、なんなんだ。
不思議な響きを持つ問いかけが、すっと静かに俺の中へと入ってくる。
どうしたらそんな曖昧すぎる質問が浮かんだのかねぇ。
それにとっても失礼だよね。何者だ、ならまだしも。
さてはて。俺は、なんなんだろうね。
「・・・さぁ。」
誤魔化したわけでも、馬鹿にしたわけでもない。
ただ、ふと己が何かを考えても、答えなんて輪郭すらなかったんだ。
さすがにこんな抽象的な質問されたのは初めてだよ。
山並くんは黙したまま。
先ほどの警戒も、怯えに似た小さな憎悪も、消えてはいない。
だけど、それ以上追及してはこないみたいだった。
その沈黙は驚きと共に、少しだけ心地よくて、俺の口元は勝手に綻んだ。
ただ、と小さく笑ったまま呟く。
「俺も君も、人間ではあろうよ。」
至極当然のこと、だが彼は少しだけたじろいだ。
その瞬間に力が緩まったのを逃さず、その縛りからさらりと抜け出す。
そのまま迷いも無く玄関まで歩いた。
「遅いって!早くしろよな―・・・」
口を尖らす陽は、再び玄関に顔を突っ込み山並くんを大声で呼ぶ。
「何かあったの?」
首を傾げる真澄には、静かに首を振っておいた。
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