嗚呼、素晴らしき | ナノ
∴渦、中心


「よし、それじゃあ出発だねぇ。」

しっかりと見慣れた不審者ルックになった陽を見ながら、のんびりと口を開く。
さっきまでの美少年はきらきらしすぎて目に痛かったもの。

「おぅ、楽しみだなー。」

元気に玄関まで軽くスキップで行く陽、続く真澄。
穏やかな光景に目を細めつつ、頷きも立ち上がりもしない彼へと目を向ける。

「行かないの、」

そんなわけはないはずだけれど。
だってほら、しっかりと着替えていらっしゃるし。

話しかけた途端にまたこちらを睨んでくる。
いや、見ているだけなのかもしれないけれどね、ちょっと目つきが悪すぎるよね。


「何やってんだよ、2人とも!」

既に声は廊下から響いてくる。
イベントを思いっきり楽しむ姿、まことに可愛らしいよねぇ。

静かに立ち上がって向かった俺は、背後で山並くんも動いたのを感じた。

格好良くトリを務めたかったのかねぇ。
まさか、と分かりながらも無駄な思考が脳内をめぐる。

思考が真剣でないのは、そんなに興味が無いから。
攻めとしての彼は大切だけれど、別に彼個人はなんら特別ではない。


くんっ、と体が不自然に静止する。

なんでって、それは。

「どうかしたの、」


俺の腕をいきなり掴んだ、目の前の彼に聞いて欲しいな。


静かに目を見つめて問えば、彼は唸るように、明らかに俺を警戒する声で答えた。


「おまえは、なんなんだ。」




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