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よくぞここまで、といった感じだねぇ。
どれだけ王道なんだろうか。
いきなりの王道カミンググアウトには驚いたが、美少女に近い美少年にはもっと驚いたとも。
さすがに、目は赤じゃなかったけれどね。
でも、銀髪に赤い目だなんて王道の編入生ってまるっきりアルビノだよねぇ。
そんな元気にお外で無防備に遊んだりしていいのかしら、と俺はよく思うよ。
ようやく動き出した気がするね。
面白いことになればいいけれど。
「おい、てめぇ。」
陽の支度をリビングで優雅に待つ俺たち。
低い声で言葉を発したのは、俺を睨みつけている山並くんだった。
「何かな、」
あくまで穏便にことを済ませようと、にこやかに応対する。
じゃないと隣の真澄が、ショックと恐怖の連続攻撃で可哀想だからね。
「何を企んでやがる。」
脅すかのような声にも全く動じない俺に、ますます視線はきつくなる。
陽の番犬くんは、どうやら本質は狼みたいだねぇ。
「さぁ、君が何をいいたいのかが俺には分からないなあ。」
小さく肩をすくめて見やれば、眉間に盛大に皺を寄せた山並くんは大きく舌打をした。
「てめぇ、陽に何する気だ。わざわざ鬼ごっこを強制しやがったり、」
ギラリと光る凶暴な目は、俺を疑っている。
言葉だって質問ではなく、最早確認。
なるほど、この人は随分と陽にご執心のようだ。
それに自分勝手で思い込みが激しいみたいだねぇ。
山並くんの中では既に悪役な俺は、それにふさわしいあくどい笑みを浮かべる。
「うるさいなぁ、俺の勝手でしょ。」
理不尽だろうけれど、俺が面白ければ何だっていいんだし、それに。
「陽の敵では無いし、さっきの言葉も嘘じゃないよ。」
だから、そんなに吠えないでくれるかな。
なんでって、うっとおしいから。
にっこりと全てを飲み込むように笑えば、山並くんは目をそらして口を閉ざした。
ふふ、目をそらすって、負けを認めてるようなもんだよねぇ。
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