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2人の去った二階席。
未だ動きを再開しない人々。
意外とひんやりとしていた手は、すんなりと、いとも簡単に逃げてしまった。
名残惜しそうに手を見つめる会長は、だがしかし口元に笑みを浮かべている。
「やっぱり、いいな。」
沸き起こるのは、激しい欲望。
目をすがめて、まぶたに映るあの姿に笑いかけた。
その言葉に、いい加減にしろと言いたかった陽。
面倒事の気配を感じた副会長。
だがしかし、2人は沈黙したままだった。
不意に、にっこり笑った顔。
満面の、ちょっと不敵な笑顔。
それに、飲まれてしまった。
嗚呼、素晴らしき。
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