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目を見開いた会長。
陽も真澄も副会長も、みんなが同じような反応をしている。
まるで時が止まったかのような。
そんなに驚くだなんて、本当にひどいよね。
俺の全てだなんて、ちっとも知らないのにねぇ。
「・・・っはは!」
いきなり楽しそうに笑い出したのは、言わずもがな、俺の隣の会長。
「おまえ、本当にいい性格してんな。」
俺に叩かれた頬に片手を置いて、心底楽しそうに笑う。
その姿にも驚いたらしく、副会長たちは無言だった。
会長は、叩いて行き場をなくしていた俺の手をとり、にやりと笑う。
そのまま、俺の耳元にその整った口を近づけ、妖しくささやく。
「・・・欲しい。」
その声には、明らかに欲の色が滲んでいた。
なんて、めんどうな。
さらりと全てをかわすように立ち上がる。
さりげなく握られていた手も外し、会長の手の届かない距離までひらりと歩く。
くるりと振り向いて、今度は少し眉をしかめて、一言だけ言っておいた。
「ありえない。」
俺が、会長を好きになるなんて、ありえない。
会長だけじゃなく、俺は恋なんて落ちない。
そもそも会長なんて好みじゃないし。
俺は、あくまでも、みんなのいちゃつきを見ているだけ。
それだけで十分なんだから。
真澄の手を取って、すたすたと歩き出す。
ちなみに、陽は会長と副会長のために置いといた。
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