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その場の全員の視線を受けた陽は、全く怯みもせずに会長を忌々しげに睨む。
その態度も瞳も、強気で真っ直ぐだ。
己の正義感に従う、純粋で真っ直ぐな強い人なのだと思う。
ただの傲慢、エゴ、愚直、そう言われてしまえば終わりだけれどね。
でも、それもまた一興。
俺としては、王道な変装のせいでその瞳が隠れてしまっているのが残念なだけだ。
「京に何の用だよ!」
驚くべきことに、陽の口から出たのは俺の名前だった。
あれかな、「俺以外に話しかけるなよ」っていうツンデレ的な言葉なのかな。
「おまえには関係ないな。」
相変わらず余裕な態度の会長は、ふっと鼻で笑って肩を竦める。
対する陽は、その態度に盛大に眉をしかめて吐き捨てた。
「ムカつく奴・・・!とにかく、2人には手を出すなよ!」
おぉ、と不意に少し感激した。
すでに自ら空気に溶け込もうとしていた真澄の存在を忘れていなかったとは。
やっぱり総長だかなんかをしていて、今までもこれからも人に愛される人物なだけはあるのかねぇ。
だけど、真澄は別にここで引き合いには出されたくなかっただろうに。
しかし・・・。
2人には手を出すなよ、ってことは自分には手を出してもいいってことなのかねぇ。
うっかりニヤニヤしてしまいそうなのだけれど!
さてなんと答えるのか、と視線を横に向けると、何故かこちらを見ていた会長と目がばっちりと合った。
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