嗚呼、素晴らしき | ナノ
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俺の言葉に反応した声は、俺の後ろから響いた。
もちろん俺の前の副会長ではない。

副会長よりも低く響く美声には、どこか聞き覚えがある。


なんて悪いタイミングなんだ、と自分の運の悪さを呪いつつ、ゆっくりと後ろを振り返った。


「盗み聞きですか。」

目を眇めて立っているのは、間違えるはずもない会長様。
その瞳に浮かぶのは、不服そうなものではない。
いたずらをする子供のような、面白がっている瞳。

俺様生徒会長だもんね、そりゃあサディストだろう。
その色に確信して、あまりの面倒くささに、思わず乾いた笑いが漏れそうになった。


「ここは公の場だろうが。」

盗み聞きも何もあったもんじゃない、と小さく笑う。
やっぱり、笑い方も同じ人間とは思えないほどに格好良く、美しい。

会長はその長い足でゆったりと歩き、俺の隣の椅子をひいた。
素早く注文を済ませつつ、俺に視線を向けて口角をあげる。


「よく待ってたな、」

おまえが命令したんじゃないか、と言い返してやりたいがここは堪えよう。
だが、どうしても「よくやった」とペットを褒めるかのような口調が癇に障る。


だけどねぇ、俺は大人だからねぇ。
ここで俺が会長と談笑もとい口論をしたところで、俺に一体何の利益があるだろう。

ここは、俺との会話は素早く切り上げて、陽に構ってもらいたい。
目の前で存分にいちゃついてもらいたい。

だって、会長×編入生は王道中の王道だもの。


自分の欲のため、会長の言葉はさらりと無視することにした。
あとは会長が陽をナンパすればいいと思うよ。
だって、まだ陽に対して、“姿を消した総長”だとかの疑惑がかかっていない。
大切な部分が抜けている。


「おい、てめぇ!」

心の中で頷いていると、意外にも、話しかけたのは陽だった。




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