嗚呼、素晴らしき | ナノ
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「千島京くん、だっけ」

俺が2人を見つめていようと決意した矢先、副会長から話しかけられた。
今までずっと、俺を空気のように扱うか、睨むかしかしていなかったのにねぇ。
どういうつもりなんだろう。

いつの間にやら、名前までしっかり覚えられていたことは、そこまで喜ばしいことでもない。
綾瀬副会長だから、というより彼が王道副会長だからかな。

俺に似た部分も多いから友人にはなれるかもしれないけれど、タイプじゃないよね。


もし万が一、俺が恋愛をするのなら。

落ち着く人、傍にいて楽な人がいい。


「・・・何か。」

表面上を取り繕うことなんて慣れっこだ。
自分の中をめぐる思考を、押さえ込み飲み込んで、副会長に向かって愛想笑いを浮かべる。


誰も、気づかないんだよねぇ。

副会長の嘘笑いには気づいたくせに、陽だって気づかない。
俺の表情のほとんどだって、意図的に作られたものであるのに。

誰も、気づいてはくれない。
だけど、それでいいんだと思うなあ。

諦めているわけじゃないけれど、人間なんて、所詮そんなものだよね。
他人は結局、他人でしかない。
社会で生きるためには、円滑な人間関係が必要だ。
自分の感情や欲求を押さえ込むことは、大小の差はあれ、全ての人が強いられている。

だけど、欲を言ってしまうなら。

そんなことをしなくてもいいような、一緒に居て心の底から落ち着けるような、そんな人が欲しいな。


まぁ、そんな考えはただの理想や夢物語であって、現実は厳しいものだけれどね。
それはそれでいいんだ。
現実では腐世界に癒してもらっているから。


「君って、暁良とどういう関係なの?」

静かにこちらを見つめてくる副会長に、痙攣しそうな頬を理性の力で抑えつつ、きっぱりと答える。

「他人です、何も関係ありません。」

少しは関係ができたのかもしれないけれど、ほぼ無に等しい。
さっき自己紹介しあっている風景を見ていたくせに、副会長は何を言い出すんだか。


「へぇ、無関係か。」




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