嗚呼、素晴らしき | ナノ
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「あっ、京ってもう食べ終わったのか!?」

唐突に声をあげた陽は、相変わらず無邪気な幼子のようだ。
初日以来お気に召したらしいオムライスを呑気に食している。

・・・別に、怒ってるわけじゃないから。
退屈すぎて憂さ晴らししたいなんて、この優しい俺が思うわけないでしょ。

だって俺は正常だもの。
俺の胃腸は一般人のものだもの、と陽の前にずらりと重なる皿を前に思う。

どうしたらこんなに美味しい食べ物を詰め込むのやら。
ここまで食べるほど飢えているのか、分からない上に、陽の生態系だなんてどうだっていいけれど。

「お気になさらず。副会長とデザートでも食べたら。」

心の声やら溜息はおくびにも出さず、にこりと表面上で笑んだ。

陽は不満そうな声を出していたけれど、その隣でずっと俺に強い視線を送っていた副会長のことも考えて欲しい。
鈍感だとか天然で全てが片付くだなんて、ありえない。

明らかに独占欲も嫉妬も丸出し、腹黒でも表面上は王子のはずだったのにねぇ。
王道編入生の影響力は素晴らしいのだねぇ。

ただ思うのは、きっとこれは陽のせいだけじゃないんだろう。
ここまで副会長が陽に執着するのは。


執着というか、溺愛攻めって良いけどねぇ。

副会長の愛は、まだまだ浅い気がするんだ。
自分の仮面を見破られたこと、未知の明るく邪気の無い人物、それらに対する興味と憧れの延長線上でしか無いんだから。


溺愛になるなら、もっとヤンデレに近いくらいに愛して欲しいよね。

嫉妬も独占欲も支配欲も強くて、だけど相手の全てを肯定する、相手の敵は俺の敵、おまえを苦しめる奴等は許さない、誰よりもずっと愛してる、離せない。


・・・萌える!いい感じだ!

下がり気味だった気分が、妄想によって少し上昇する。
考えてみれば、今俺がするべきことは不満をたらたら述べることではない。
今、目の前で副会長が陽に絡んでいるこの光景を享受することじゃあないか。




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