∴食卓を飾るのは
そして、粘ろうとするもあっさりと挫けた陽と共に、巻き添えをくらった俺と真澄。
いや、一番先に誘われたのは俺だけれどね。
俺は断る気しかなかったもの。
陽が副会長を前にしぶしぶ了承して、泣きつかれた真澄が優しさから苦笑いで頷き、健気受けに弱い俺は何となく許してしまった、という経緯だ。
浮気攻め×健気受けって、いつ読んでも涙腺崩壊ものだよねぇ。
本当に素晴らしい、飽きない設定だよ。
・・・とまぁ、とにかく。
つまり、俺の中では悪いのは陽ひとりだ。
全く、なんでこんなに意思も弱く流されるんだか。
王道編入生だからって、少しは周りの迷惑も考えられるようになって欲しいものだよ。
副会長と会長の、「周りの視線がうざい」という理由のために俺たちが今いるのは食堂の2階。
ご察しの通り、生徒会と風紀委員会の専用スペースだ。
役員の許可および同行があれば、一般生徒でも利用して良いらしい。
ざわめきも遠ざかるし、人の視線が無いのはとても嬉しい。
設備も1階よりも綺麗で、王道を実感する以上に素晴らしい。
目の前で副会長が陽にベッタリなのも、全く問題ない。
だけどねぇ、それよりも面倒くさいんだよねぇ。
「・・・俺は何でここにいるのかねぇ」
自分の存在の無意味さに、思わずためいきがこぼれた。
そんな俺に、右隣の真澄は苦笑いで答える。
「それは、会長に誘われたからでしょ。」
「俺はもう昼食も食べ終わったし、それに・・・。」
言葉を切って、俺は左隣の空席へと目を向ける。
俺たちは全員がひとつの丸テーブルに腰掛けていた。
副会長と陽はぎゃあぎゃあ騒ぎながらも、自分達の世界に行っているけれど。
そして、俺の左側の席を、陽から奪い取った本人は、今はいない。
掛かってきた携帯電話を片手に、颯爽とどこかへお行きになりましたとも。
・・・命令口調で、「いなくなるなよ」とか言い捨てて。
全く、なんて退屈で面倒なんだろう。
俺はこんな時間が、最も嫌いだっていうのに。
苛立つ思考回路と、何故かひどく痛む胸。
もう一度ついた溜息は、やっぱり少し震えていた。
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