嗚呼、素晴らしき | ナノ
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「何考えてんだ、」

引きつりそうになる表情を抑えつつ思案にふける俺に、会長が声をかけた。

少し機嫌が良さそうな会長には、ああ、やっぱりかっこいいなと納得する。
こういう人物になら騒ぐ気持ちも分からなくはない。

もうその件については、深くは考えないことにするが。


「特に何も。」

肩を竦めて言うと、目の前の食べかけの料理に目をやった。
冷めてしまわれた、俺の素晴らしきお昼ごはん。嗚呼、無情。


「っだからぁあ!」

俺がぼんやりと机の上を眺めていると、唐突に陽の声が響いた。
思わず見やれば、相変わらず陽に副会長が絡んで、それを山並君が阻止しようとしていた。

しかしながら、その中心の陽の視線の先はしっかりとこっちにある。

・・・これは!


“いつもは俺のところに来るのに、どうして違う奴に構ってんだよ。”

という正体不明のイライラ、焦燥かもしれない!

そしてそれは、恋心によるものだとそのうち自覚するんだよねぇ。
うん、悪くない。

ちょっと強気主人公の王道な落ち方のひとつだけれど、やっぱり萌える。



「そこの2人、勝手に何してんだよ!」
「なんだ、おまえの許可でもいるのか。」

不機嫌顔の陽と、対する会長は余裕の笑み。

周りからは黄色い歓声と、汚い罵声が飛ぶ。


「っ会長は、飯でも食っとけ!」

食堂に何しに来てんだよ、と突っかかるように言い放った陽。
会長はそれにくすりと笑って、そうして何故か俺に向き直った。


「確かに、俺は昼食がまだだ。一緒に食べてもいいか。」

ずっと潜むようにしていた真澄の肩が跳ねた。
確かに、一緒に食べるとなると流石に周囲の報復が恐ろしい・・・。

眉をひそめた俺と、怒りのオーラと共に口を開けようとした陽。


俺たちを遮ったのは、思いもしない人の弾んだ声音だった。



「いいね。僕も陽とごはん食べたいな、」

にっこりと笑んだ副会長は、その優しげな笑顔で陽を威圧しながらそう言った。




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