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明らかに非難の色が見て取れる声に、心の中でにやりと笑う。
・・・だけど。
「いやぁ―!」
「あのオタク、絶対殺す・・・!」
「千島様ぁ―!」
「クソやろう・・・!」
「生徒会の皆様にも手を出しておいて・・・!」
・・・あれれ?
なんでこの人たちは、陽に対して怒っているんだろう。
まぁ、確かにね。
王道編入生は気に食わないだろうよ。
だが、生徒会に話しかけられる一般生徒だって同等だろう。
予想通りに行かず、腑に落ちない。
そんな中、会長は周りの声が聞こえぬかのように話を続ける。
「・・・へぇ。名前は?」
あらまぁ、面白いことを聞くねぇ・・・。
「知ったとしても、貴方には何の利もありませんよ。」
陽を射止めたいのだとしても、俺は直接協力はしない。
俺はあくまで友人で傍観者。
恋のキューピッドは御免だし、むしろカップル成立までの恋愛模様がみたいんだ。
それに本気で知りたいのなら、すぐに知ることが出来る立場だろう。
「利か損か。それは俺が決めることだ。」
あっさりと言い切った様は、流石に人の上に立つ者だ。
威厳にあふれる王者。
「・・・千島京です。」
勿体つけて断る理由も無ければ、恐れ多いと喜ぶ理由も無い。
なんとも複雑な心境ながら、俺は名乗った。
・・・減るものではないし、良しとしよう。
その瞬間、またしても悲鳴が起こった。
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