嗚呼、素晴らしき | ナノ
∴5


思わず、鼻と口を手で押さえた。

理由はもちろん、目の前で繰り広げられる光景。
奇跡的すぎる、王道な展開。

これを前に、興奮しない不届き者には腐を語る資格は無かろう。


「え?何って、カードだけど。」

重ねられた輝くカード達から自分の物を抜き取り、平然と手渡してくる。

問題だよ、大問題だ。
周囲もざわざわと騒がしさを増している。


「その金色と銀色のカードはどうしたの?」

内心でニヤニヤと期待しつつ、びっくりしたように尋ねる。
おまけに、陽の手にあるカードを指す指を軽く震えさせてみた。


「案内してくれた副会長のと理事長の。…どうかした?」

「副会長とは友達?」

うん、と当たり前のように頷いた陽。
クラスから誹謗中傷の嵐。
対して俺は、心の中で喝采をあげていた。


ここまで王道だと、陽を崇めたくなるよ。
一般生徒とはほとんど関わらない副会長と理事長のカードを、あっさりと入手!
きっと気に入られたんだろう。
…素晴らしい!
王道とは言え、本当にこんなことが起こるなんて!


「良かったね、陽。」

これからも期待しているよ。
頑張って、総受けライフを楽しんでくれ。

周りをスルーした俺は、極上の微笑みをプレゼントする。


一瞬静まり、また更に陽への敵意を増したクラス。
周りにきょとんとしつつ、俺の言葉にはにかむ陽。



う―ん…
王道通り、無自覚で軽く天然な強気かねぇ。
我が強いわけでも、空気が読めないわけでもなく、また騒々しくないのは大変よろしい。
元総長だったり、過去有りだとなお良いなあ。


授業中も、俺は上の空でわくわくと妄想していた。




[prev] | [next]

back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -