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あれ、陽ってば今更気づいたのかな。
それこそ初めから注目されていたし、俺達の会話はクラス中に聞き耳を立てられていたよ。
俺に害は無さそうだし邪魔はしないから、どうでもいいけどねぇ。
「陽と仲良くしたいんだよ、きっと。」
にこりと笑うと、ぼさぼさの長い前髪の下で陽は眉根を寄せたようだ。
顔にすぐ出るタイプだねぇ、可愛らしい。
「でも、今のところ陽と1番仲良しなのは俺。お隣さんって得だねぇ。」
そう言ってくすりと笑みをもらすと、顔を赤くした斜め前のクラスメートが話しかけてきた。
「ち、千島くんは藤浦くんを気に入ったの?」
何を尋ねてくるかと思えば。
チワワのような彼に、簡単すぎる質問に、笑顔をサービスしつつ頷いた。
「とても気に入ったよ。」
途端に軽くざわついた教室と、身じろぎをした陽。
ひゅう、とそこに気の抜ける口笛の音が響いた。
「上機嫌だなぁ、千島。」
話しかけてきたのは、担任教師。
金髪でいかにもホストのような奴、ここも王道だ。
俺を通じて陽に興味を持ってくれれば嬉しいねぇ。
そうすれば、俺はますます上機嫌だよ。
にっこりとまたサービスして、俺は会話を打ち切った。
「そろそろSHR終わりましょうよ、先生…?」
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