嗚呼、素晴らしき | ナノ
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「っうわぁ!」

真澄が驚いたような情けない声を出した。
受けっぽくて良いんだけどね。
だけど、それはちょっと相手に失礼じゃないかな。

いくら相手の前髪が長くて顔半分が隠れていても。


身長はかなり高く、茶髪の髪も落ち着いていて好印象だ。
ただ、顔がほとんど見えないのが残念だねぇ。


「こんにちは、迷子の者です。新入生で千島京と言います。」

とりあえず、“誰なのか”と聞かれたので自己紹介をしてみた。


相手はこくりと頷いていて、またポツリと尋ねてきた。

「どこ…」

「寮に帰りたいんです。」

道を教えてくれるのかな。
それにしても、不思議な雰囲気の人だねぇ。

なんだか、こういう空気を持つ人は好きだよ。
とても落ち着けるんだよね。


その人はまた同じように頷いていて、くるりと踵を返した。

まさかの展開だ、案内してくれるらしい。
ありがたいねぇ。
こんな善人もいるなんて、世界はまだまだ捨てたもんじゃない。


未だに固まったままだった真澄に合図をして、その人の後に続いた。

ありがとうございます、と伝えると、ちらりと振り向いて微笑んだ。

顔の上半分は変わらず隠れていたけど、その笑顔がとても綺麗なのはよく分かった。





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