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緊張しているのか、大河の強張った顔がたまらなく可愛い。
強面の一匹狼はどこへやら、俺の中での大河はへたれとツンデレの代表格となっている。
そうだね、と微笑みかければ、わずかながらその肩から力が抜けたのが見て取れた。
夏休み、とは口にするだけでなんとも気分が高揚する言葉だ。
まぶしくて夢にあふれていて、きらきらしてエネルギーがある。
「遊ぼうかね。」
真っ青で高い空、白く大きな雲、照りつける日差し、勢いを増す緑。
これから先を考えるだけで、なんだか自分もずいぶんと幼くなったような気恥しい期待が
ある。
「あっ、遊ぶー!」
目をきらきらさせて話に飛びつく陽に、大河が少し苦く笑いかける。
こちらをうかがってくる可愛い真澄には、おでこを中指で攻撃しておいた。
「真澄もだよ、当たり前でしょ。」
同室であるとか、平凡受け萌えだとか、ゆなえとの共通点を抜きにしても、俺がこの学園で最も近しいと感じている存在だ。
そんな不安そうな顔をすることは、でこぴんの刑に値する。
「俺、海行きたいなーっ」
「街で遊ぶ」
「僕は花火大会にみんなと行ってみたいかなあ」
明るい顔で口々に言うみんなを見て笑う。
おだやかな幸せ、学生生活を満喫しているような気がするねぇ。
「うん、じゃあ全部しよう。」
高校生になってはじめての夏休み、楽しまない手はないよね。
地元の友人達や行きつけのお店に行くのも待ち遠しい。
うん、いい夏休みになりそうだ。
「だからみんな、期末テスト頑張ろうね。」
ふふっと笑えば、陽の顔が一気に青ざめた。
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