∴白いシャツと夏の計画
制服更衣期間も終わり、白い半袖のカッターシャツが目にまぶしい。
真澄の生白い腕は庇護欲をそそる受けの象徴といえるし、逆に大河の焼けた逞しい腕は攻めの必需品だ。
とはいえ、俺は男前受けとか平凡攻めも好物なんだけれど。
とにかく露出の増える夏っていいよねぇ。欲望と扇情の季節だよ。
「真澄の地元はどのあたりなんだっけ?」
そうめんをすする姿に妄想がはかどる。
「ここからバスと電車で2時間くらいかなあ。京は?」
ふもとの街に出るまでにバスで40分はかかるものねぇ。
中等部からここに通う大河は、このあたりが地元らしい。
「俺はねぇ、新幹線で帰るよ。」
わざわざ地元を遠く離れて来てるからねぇ。ほら、萌えを見るためにね。
あと下らない事情を付け足すなら、ゆなえを苛めていた同級生とそろそろ離れたかったのもある。
うむ、くだらない。
「えっ、じゃあ遠いのかよ…!」
相変わらずの変装な陽ががたんと勢いよく立ち上がる。
その前には今日もずらりと明らかに常軌を逸した量の皿が並ぶ。
陽は海外転勤する両親から、母の弟である叔父に預けられる形でこの学園に編入したのだと言う。
とは言え、もともと住んでいたのは隣町。おまけにそこでやんちゃをしている内に会長に目をつけられたのだとか。
ほんと王道だよねぇ。
「ほどほど遠いねぇ。陽はご両親のとこには?」
「あー…、行く。だけど1週間くらいで寮に戻る。」
なぜか急にテンションが下がった陽が座りながら答える。
首を傾げて先を促すと、珍しく覇気のない返事が返ってきた。
「俺の両親、すっげーらぶらぶでさ、なんか居づらいってゆーか、追い出されるってゆーか…。」
なるほど、陽にも苦労があるんだねぇ。
「…京、」
「なあに?」
横目で見ると、目を泳がせ、拳を握りながら大河は切り出した。
「…夏、会えないか?」
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