嗚呼、素晴らしき | ナノ
∴崩れ壊れる


「どうしてこうなったの…。」

蒼白な顔でぼそぼそと呟く真澄を押しのけ、陽が口を尖らす。

「ったく、京ってばどこいたんだよ!しかもそいつとパートナー!?」

大きな声に周囲の視線がさらにきつくなる。
そりゃあ、会長のパートナーだし司をそいつ呼ばわりだしねぇ。

曖昧に微笑んで流しつつ、ちらりと横を見上げた。

「…っ、」

司の様子を伺うだけのつもりが、ばっちり目が合ったために思わず息をのむ。

この人の威圧感やらはどうにかならないのかねぇ。
だって一夜とはいえパートナーとして過ごすのだもの。

自分から目を外して肩を軽くすくめる。
そのまま前に目を戻すと、複雑な色を灯した陽の目とかち合った。

そこで、他愛のない事ばかりを考えて逃避していた俺はぐんと現実に引き戻される。

そう、理央との出来事について聞かなきゃいけないんだ。
王道という先入観やら、俺たちの今の関係やらを崩してしまいそうな出来事を。


はあ、と心の中でため息を吐いた。
それは未来へのものぐさじゃなく、今でさえ揺れる己に対するため息だ。


「にしても、鬼城が京を捕まえるとはなあ。」

嫌味が存分にこもった強い口調に、思考の海から身をあげる。

その凜とした声は会長のもので、面白そうにきらめく瞳は司を捉えている。

対する司は、冷たく睥睨するように会長を一瞥し、静かに口を開いた。

「俺の胸に飛び込んできたからな。」


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