嗚呼、素晴らしき | ナノ
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2時間もあるかくれんぼ。
まだ始まってか30分しかたってないなんて、本当に嫌になるよ。

ちなみに陽も真澄も涼太も、はては大河まで隠れる側だった。
どういうことだろうね、俺の周りは隠れる側ばかりじゃないか。

出来うる限り逃げたいけれど、このゲームって逃げ切れるのだろうかね。
とにかく今は、人の来ない林の草陰にいるけれど。

限界だって遠くはないだろう。
なんたって鬼と隠れる側は同じ数、つまり500近い鬼がいるんだから。
それに生徒会を含む人気者も参加しているから、みんな真剣なんだよ。

嗚呼、恐ろしい。


「・・・持久力はないんだけどなあ。」

耳が捉えた騒がしい足音に、眉根をよせる。
逃げ足は速いけれど、そんなに追いかけっこは得意じゃないんだよね。

出来るだけ動きたくはなかったけれど、どんどん近づいてくる音に、ひっそりと腰を上げる。
神経を研ぎ澄まして、それから音の無い方へ一気に駆け出した。


嗚呼、早く、早く。
こんな時間過ぎ去ってしまえばいいのに。
こんな苛立つ時は、ひとりきりの部屋でお気に入りのBL本を読むに限るのに。

「きゃあああ! 京様だぁああ!」
「うをお!? 速ぇえ!」
「ま、待ってください―!」

ちっ、鬼が集団でいるだなんてついてない。

一瞥して、勢いを落とさないまま突き抜けてゆく。
腕輪さえ渡さなければいいんだ。
なんとか逃げ切れる、かもしれない。

誰か、鬼の知り合いがいればいいな。それも面倒でない人が。

後ろから響く足音と声を煩わしく思いながら、それでも表情は変えずに駆けてゆく。
こんなに走るなんて、それこそ鬼ごっこ以来だよ。

もしかしてこの学園の行事は、お坊ちゃんたちの運動不足解消が目的なのかねぇ。


いい加減、脇腹に痛みを感じてきた時、だった。

その時の俺は、なかなか上手く撒けない後方の鬼どもに苛立ちながら、校舎裏を疾走していた。


疲れからか、きっと注意不足だったのだろうね。

再び林へ戻ろうと角を曲がった途端、すごい勢いで誰かにぶつかってしまった。


嗚呼、やんぬるかな。



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