嗚呼、素晴らしき | ナノ
∴息をひそめて


時は滞ることもなく進み、その流れは今の俺には速すぎた。

臆病な俺は、陽にあの行動の真意を問うこともできないまま。

心の中でもやもやと考えて、だけれど本人を前にすると言葉が出ない。

それとなく陽の行動を目で追うも、不審な点もなければ、ただその眩しさが目に付くばかりだ。


「どうすればいいのやら・・・。」

理央は、離れないでいてくれるようだ。
それだけが救い。

だけれど何かしなければ。
このままで大丈夫だという確信がない。

相手の優しさに甘えて、鈍感になることこそが、怖いんだ。

気遣いはもちろん、大切な存在ならば気にかけて守ろうとしなきゃ。


気づいたときには、もう遅い。


「これが終わったら、聞いてみよう、かな・・・。」

臆病で狡猾で、とにかく器の小さな逃げたがりの俺だけれど。
勇気、とやらを出してみようじゃあないか。
何にせよ、これが終わってからだけれどねぇ。

ああ、面倒くさい。
そう思ってしまう俺だけれど、だって仕方ないよね。


かくれんぼ、だって?

そんなもの、小学校低学年で卒業したんだよ。
今更、何が楽しくてじっと隠れていなきゃならないのか。
しかも鬼に腕輪を取られたら、その人とこの後一緒に過ごすだなんて。


いや、傍観する分には楽しいだろうよ。
萌え的要素もあるしね、そのあとの時間とかもにやけるしね、楽しみだとも。

だけれど、自分が巻き込まれているとなると、ことは違うんだよ。

残念ながら、俺は男だけのこの行事に胸をときめかせたりは出来ないもの。
男同士の恋愛は大好物だが、俺自身はノーマルだからね。


静かな林の草陰でひとり、そっと息を吐いた。


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