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幸せそうに楽しそうに笑った副会長は、弾む声で告げてくる。
「なるほどね。…ふふっ、君といると、すごく楽だな。」
伸びやかな表情の彼に無言で首を傾げると、ああと口を開いた。
「陽といる時は、やっぱり好かれたかったから。」
結局、陽と一緒にいても自分を作っちゃって、と少し悲しそうに言う。
好きな人の前では自分を作っちゃう、という可愛らしい行動だねぇ。
大変よい、悶えるとも。
それとも、拒絶されたくなかったのかな。
だって一時的にしろ、自分を認めてくれて、心を開いた人だもの。
でも、俺は思うよ。
「誰だって、自分を作るのだろうよ。」
それは、陽も例外ではない。
もしかしたら、あの光のような陽は演技かもしれない。
俺が見誤っているだけで、心の中は黒くどろどろに濁りきっているかもしれない。
だけれど、好かれたいと願うのも、自分を作ってしまうのも、良いじゃないか。
そうでなきゃ分からないよ。
愛をもらえた嬉しさや達成感、自分を偽らない自由さ心地よさ。
そうでなきゃ生きていけないよ。
この世界はあまりにも秩序を大切にしているもの。
「…君の世界は不思議だね、京。」
目を細めた彼に、ありがとうと微笑んだ。
そのまま無言ですっと立ち上がる。
出る間際、振り向いてふわりと笑って言っておいた。
「世界は美しいよ、拓巳。」
醜く歪み、冷酷で煩雑、混沌としている。
それでも、いやだからこそ、世界は美しく愛おしい。
世界に冷めて、諦めるなんてもったいないよ、拓巳。
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