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「どうだと思います?」
問いに問いで答える、なんとも卑怯な逃げだよねぇ。
でも、いくら本人がいなくとも、こんな舞台で本心なんて言えやしないからね。
「ふふ、いくら僕でも他人の気持ちは分からないな。」
言葉は穏やかなままだが、目の底が笑っていない。
こちらの応対に怒っているのだとしたら、随分とまあ、器が小さいものだ。
ストレスやらプレッシャーでもあるのかしら。
毎日あれだけ騒がれて、そのうえ演技までしているものね。
それでなくても生徒会は忙しいだろう。
ふっ、と笑みにまぎれて嘆息した。
すっと副会長の目を見据えて言う。
「嫌いではないですよ。」
好きでもないけれど、ね。
苦手な性格だし、危険人物だもの。
別に俺は、照らして欲しいなんて望んでいないしね。
でも陽に悪気なんてないことは関わってきて十分に分かった。
彼は純粋で無邪気で、心からの感情をくれる。
嫌いにも、好きにもなれない。
そっと心の中で呟いた言の葉を、目の前の彼は読み取っただろうか。
少し楽しみにしながら、静かな観察を続ける。
見つめ合って数秒後、副会長の肩からふっと力が抜けた。
雰囲気が一変して崩れ、どことなく疲れた笑顔を浮かべる。
「はあ、君って性格悪いね。はっきり言ってよ。」
あら、黒いオーラがだだ漏れじゃあないか。
とうとう面倒になったんだねぇ。
ゆったりと笑みながら、ただ見つめる。
口元を歪めた王子は、美しい顔を苦痛に染めて吐き捨てた。
「最近さ、陽が憎くてたまんない。」
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