嗚呼、素晴らしき | ナノ
∴似て非なる彼


ゆっくりと、静かに深く呼吸をした。

動揺も苛立ちも、何もしていないのだけれどね。

深呼吸というものは、自分を世界から遠ざけてくれるものだと思う。
その場所から1歩下がって、周りに壁ができたように感じるんだ。

言うならば、静かで穏やかな拒絶なのだろうね。


そして今、何故それをしたのか。
それは俺じゃなく、この人に言っておくれよ。

「それで、僕の質問に答えてくれるかな。」

にっこりと完璧な王子様スマイルを浮かべる副会長様に。




時はさかのぼる。

かくれんぼの話を真澄に話して、陽たちと4人で食堂に行った。

部屋では、真澄の嫌そうな反応だとか、俺が不良×真澄で萌えたりとか。
まあ色々あるのだけれど、特筆すべきことではない。

食堂はいつものように騒がしく、でもまあ皆さんご親切だ。
道をあけてくれたり、席を譲ってくれたり、にこやかに挨拶してくれたり。

だけれど、珍しく副会長様がいらっしゃった。
いや、陽がいるのだからそれほど珍しいことじゃないか。

陽と楽しげに話して、じゃれあって、俺に萌えを提供してくれたとも。
毎度の事で、少し飽きてきたけれど、それでも萌えるし嬉しいよね。


とまあ、そこまでは普通だったのだけれどねぇ・・・。


かくかくしかじか、今の俺は生徒会室にいる。

それも、副会長とふたりっきりで。



あらまあ、非日常だ。
一般生徒であくまで傍観者の俺が呼ばれるなんて、どういったことだろう。

食堂で、「君に手紙をあずかっているんだ」と自然な仕草で封筒を取り出した副会長。
中を読めば、それは副会長からの“放課後に1人で生徒会室に来て”という手紙だった。

まったくまあ、お芝居が上手いこと。

さて、何が俺を待っているのかしら。


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