∴4
うんうんと頷いて、なにやら考え込んでいる陽は、一体どうしたのかねぇ。
まったく、これだから王道編入生という生き物は分からないよ。
行動も反応も、全てが予測しづらい、枠を超えたものなんだから。
そんなやり取りをしながらも、順調に部屋の前までたどり着いた。
ちなみに、俺と陽の部屋はお隣さんだよ。
ふふ、腐の神様ってば、本当に優しい方だよね。
あっさりとじゃあね、と手を振ろうとしたが叶わなかった。
手が、あがらなかったんだ。
理由なんてそりゃあ、陽が突然に俺の腕を掴んだからだろうよ。
「どうしたの?」
いつも一緒に食堂で食べる夕飯のことかな。
それとも、かくれんぼの件をまだ引きずっているのかな。
こてんと首を傾げる俺に、なにやら決意した目の陽は言った。
「あのさっ、よければ・・・、かくれんぼで一緒になろうぜ?」
稚拙な言葉に、疑問符が浮かぶ。
いや、致し方ないだろう。
明らかに陽が言葉足らずなんだもの。
「ええと、俺と陽が鬼と隠れる側に分かれた際に、どちらかが片方を捕まえて、一緒に七夕を過ごす、ということ?」
まばたきをして確認をとると、大きく頷かれた。
ううむ、どうしたものか。
出来れば俺は、陽は会長あたりの生徒会と一緒になって欲しいんだけどな。
こんな美味しいチャンスに、どうして萌えを求めずにいられようか。
「ほら、楽しそうだしっ、遠慮もいらなしさっ・・・友達、だろ?」
俺の沈黙に、少し焦った様子で言葉を重ねてくる。
別に俺は、拒絶しているわけじゃないのにね。
うろたえて、だんだんとしゅんとする陽に、くすりと笑みを漏らした。
[prev] | [next]
back